※べったーより移行
向こうから歩いてくるファリアを見つけた。
俺に右手を上げるファリアに嬉しくなって駆け寄ると、突然、ファリアに胸ぐらを掴まれて壁に押し付けられ、俺の喉の奥から「ぐえ、」とカエルが潰れるような声が漏れる。
え?俺なんかしたっけ?
昨日の朝、寝癖のついた俺の頭を直そうとするファリアに「届くの?しゃがもうか?」と言ったこと?それはファリアに頭を1発叩かれて謝ったからもう終わったはずだ。
それとも一昨日、前を歩いていたファリアの背後にそっと近づいて驚かせたこと?ファリアが女の子みたいに甲高い声を上げたから、俺は腹を抱えて笑い転げて、ファリアに両方の脛を蹴られた。
記憶を辿っていると、ファリアの唇が俺の唇に重なって、俺の意識が引き戻される。
触れたのはほんの一瞬で、すぐに熱い舌が捩じ込まれた。ファリアは俺の舌を見つけると、じゅる、と音がするほど強く吸う。俺はあまりの衝撃に息の仕方も忘れて、ファリアの舌で口の中をくまなく舐め回されていく。
よく「動きがうるさい」と言われる俺の手は、キスの間やっぱり忙しなく動いて、やっとファリアの腰に添えて落ち着いた頃には、ファリアの濡れた唇は離れてしまっていた。
「お前の部屋?それとも俺の部屋?」
なんのことか分からずにぽかんと間抜けな顔を晒したが、俺はすぐに理解した。理解した瞬間、身体が一気に熱くなる。
「あ、えっと、ファリアの部屋…!」
ファリアからの激しいキスで動きが鈍くなった唇がもつれて、うまく喋れない。
「わかった。なら、30分後に来いよ」
ファリアが小さく笑って、俺の肩をトンと叩いた。待って。今から30分後なんて、無理だよ。俺をこんなにしておいて。
「10分で行けるよ!」
本当は、このままここでファリアの着てるもの全部脱がしてしまいたい。お願い、耐えられない。必死な俺の顔を見て、ファリアが眉を下げる。
「ばか、俺の準備があるだろ」
お前だって、すぐ入れたいだろ?
そう言ってファリアは俺の唇の端にキスをひとつすると、「じゃあ、後でな」と踵を返して去って行った。
どういうつもり?とか、ファリアってそっちだったの?とか。いろんな疑問が頭の中をぐるぐるとかき回す。
今から俺とセックスするために準備をするファリアのことを考えると、股間が痛い。ガチガチに興奮する。もっとキスがしたい。身体中、俺の手と舌で愛撫してその余裕を無くしたい。まだ誰にも言ったことのない甘い言葉を囁いてみたい。
俺って、こんなにファリアのことが好きだったの?