どっちかなんて選べない

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「どっちかなんて選べないよ。どっちもじゃだめ?」

ほんのわずかだって予想していなかったトミーの返事に、俺もギブソンも、たぶん同じ顔をしていたと思う。

トミーに選ばれた嬉しさと、安堵と、それからトミーを自分だけのものにできなかった悔しさのようなもの。
それぞれが腹の中でぐるぐると渦巻いて、手放しでは喜べない。

けれども、俺達は頷くしかなかった。
きっと、「嫌だ」と言えばトミーは俺達の前からいなくなっていたと思うから。

「だめじゃない。トミーがそうしたいなら、俺達はそれで構わない」
答えて、そっとトミーの手を握る。
いつだってひんやりと冷たい手。
この手が自分だけのものになればいいと、ずっとずっと思っていた。

3人でのお付き合いなんて、そんな経験はひとつもなかった。
トミーとギブソンに出会わなければ、この長い人生の1秒だって経験しなかったはずだ。
何かしらのルールは決めた方がいいんだろうか。
嫉妬で狂いそうになることもあるかもしれない。
ないもかも嫌になって、全部ぶち壊したくなることだって。
でも、それでも俺達は、トミーのいちばん傍にいたかった。

「時々思うんだけど」

青い絵の具を少しだけ水に溶かしたような色のシーツ。
そのしわくちゃの上で、俺とギブソンの間で仰向けのトミーが口を開いた。
その声は俺達にだけわかる程度に掠れている。
結局、1日交代制とか、曜日制とか、週替わりといったルールらしいルールが決まることは無く、「セックスは3人でする」ということだけがぼんやりと残された。
俺は一応そのルールをずっと守っているし、向こうもそうだと思いたい。

「僕が二人いたら、君達一人一人とちゃんと付き合えたのにって」
腹の上で組んだ指をすり合わせながら、トミーは独り言のように続ける。

「でも、考えれば考えるほど嫌になるんだ。もう1人の僕が、君たちのどっちかを独り占めしてるなんて耐えられなくて」

だからごめんね。

言い終えたトミーが、すっと目を閉じる。
どうしても今すぐトミーにキスがしたくて身体を起こすと、こちらを向いたギブソンと目が合った。

きっとまた、ギブソンも同じことを考えていることだろう。
向こうとこちらでベッドが軋む。

トミーが寝息を立てはじめる前に、決着をつけないといけない。